創造力というと芸術家やアーティストのものという誤解が多いと思います。
そうでなければせいぜいノーベル賞受賞者のような科学者やスティーブ・ジョブズのような大起業家のものという認識の方が多いと思います。
実はスタンフォード大学の起業論担当教授のティナ・シーリングやMITメディアラボ教授でスクラッチを作ったミッチェル・レズニックがいうように、創造性は芸術に限らず、あらゆる分野と場面で発揮されるものなのです。
『たこさんウィンナー』というものがありますが、あれも尚道子さんという料理研究家が発明したものとされており、これもまさしく創造性を発揮した例です。
政府や役人のコロナ対応・対策がもたもたして大ヒンシュクを買っていますが、直面する課題を解決することも創造力によります。
効果的な対処法を発明・発見するわけですから。
彼らの危機対応能力の貧弱さは、受けて来た教育の貧弱さの表れといって良いでしょう。
台湾の、母親が考案した創造力を高める独創的な教育を受けて育ったコロナ担当相のオードリー・タン氏とは対照的ですね。
創造力は教育によって高められることが分かって来た
前述のティナ・シーリング(注1)やミッチェル・レズニックは創造力は高められし、高められなければいけないといっています。
「創造性を育てることは可能です。しかし、彼らの創造力は、必ずしも勝手に発達するとは限りません。それは育まれ支援される必要があります」(注2)
現在では、創造力育成教育の研究者らが、小学校低学年から計画的に創造性育成教育をすることで順調に創造力が高まるという実証報告をしています。
札プロでの日々の指導でも、創造力育成は小学校の低学年など年齢が低いほど良いという実感を得ています。
その理由は、どうも小学5年生など性徴期に入ると急激に異性や周囲の眼を気にして、無邪気に自由に発想したアイデアで作品をどんどん作っていくのではなく、「アイデアがたくさん出ないとはずかしい」とか「こんなアイデアの作品は幼稚であるなど評価が低いのではないか?」などと考え委縮してしまうからだと思います。
アドビ社などもその検証が行われていて、やはりこのようなことが原因のようです。参考文献1・参考文献2
ですから出来るだけ早期に、スクラッチやロボットなどで自由に遊ぶ事でアイデアをどんどん出すように誘導し、そのアイデア創出力を小学5年生以降にも伸ばしていくように導くことが決定的に重要となるのです。
大切なゴールデン・エイジ 中学受験とスポーツ技能の習得
一生の中でもっとも運動神経が高まり、スポーツ技能の習得に有利と言われる9歳から12歳、小学3年生から6年生ぐらいの時期をゴールデン・エイジと呼びます。
この時期はご存知のように中学受験の時期と重なります。
現在の教育研究社の研究では、中学受験で身に付けた論理的で抽象的な思考力や読解力が受験勉強で強力な力を発揮することが実証されています。
ただし、私も小中学生対象の個別指導学習塾『横田進学教室』を10年以上経営した経験から言える事は過度の受験指導においては、四谷大塚などの受験塾の授業中に自家中毒で嘔吐する子なども実は多く、有害な後遺症が残る人も多いと思います。
後遺症とは、頭が堅くなる、つまり想像力が決定的な働きをする(注1)創造力が阻害され、また他人の心情への共感が乏しくなることです。
先の西村大臣やアベノマスクの佐伯耕三などの私立一貫教育の中学から東大に進んだ役人の出すアイデアが恐ろしく陳腐なのはそのせいでしょう。
彼らは頭が良いのではなく、悪いのです。
つまり精神医学の祖、カール・ヤスパースが『人間の知的能力の高さは知的生産性で測れる』といいましたが、つまり創造力が弱いのです。
学校の勉強と創造力育成教育は対極にあります。
学校教育は誰かが決めた答が一つある問題の正解を当てるもので、これを収束的思考と言いますが、創造力は直面する問題に気付き(問題への過敏さと言います)、多数の解決策・アイデアと思いつく能力でこれを拡散的思考といいます。
この能力はどちらも大切で、学校教育では読み書きソロバンや英語を習得するなど学力の基本を身につけますよね。
結局、ゴールデン・エイジ期の教育ではバランスが大切という事でしょう。
スポーツもヨーロッパのように出来るだけたくさんの種類のスポーツを並行して趣味としてさせる方が身体能力の発達に有益でしょう。
それにしてもゴールデン・エイジ期は人間の一生で本当に重要な時期のようですね。
(注1)ティナ・シーリング著『未来を創造するために今できること』p17
(注2)ミッチェル・レズニアック『ライフロング・キンダーガーデン 創造的思考力を育む4つの原則』 p50