学校現場で創造力の育成が無理な理由と創造力育成教育の高い効果

今日は日本のほとんどの小中高校では創造力を育成できていないという現状を解説したいと思います。

何度もこのサイトで書いていいますが、今は世界的に収束的思考人間より、創造力のある人間、拡散的思考人間の方が生きる上で有利になっています。

収束的思考とは学校の勉強のように、答が決められていてその答えを追求して当てる思考です。

発散的思考とは「新しい起業のアイデアを200出しなさい。」といった、答を自由に想像していく思考です。

今はますます創造力のある人間が活躍する時代になっているのに、創造力を伸ばす教育が小中高校では実施が困難であるという研究結果がありあます

私が高校商業科教員で、社会科の教員免許を取得するのに通信教育を受けた仏教大学の『学校教育が創造力の育成を軽視する要因~社会人基礎力獲得の観点から~』という2012年の論文です。

論文によれば、日本の小中高校で創造力育成の教育を行うのは無理で、何よりも学校側が消極的であると書かれています。

その理由は教師が創造力を発揮しようと努力して発揮した経験や、創造力を高める教育・トレーニングを受けたことがないからだそうです。

高校現場にいた経験では、創造的な創意工夫のあるアイデアに富んだ授業を行う教師は少なくありませんでした。

しかし、芸術作品やアート作品を創造したり、起業したり、ビジネスモデルを作ったり、学術研究をして発明発見に努めたり、企業内ベンチャーを起こしたりした経験がある教師は皆無でした。

教師の最大の欠点の一つは、民間企業である程度長く働いたり、起業したりした経験がなく、生まれてこのかた学校しか経験したことがないことです。

これは私が高校教員を辞めた理由の一つです。

私は教員生活5年間で分掌の仕事は進路指導部でしたが、進路指導部や生活指導部の教員が決まり文句のようにこう言うことがありました。

「お前ら、世の中にでたら、これでは通用しない。だからもっとしっかりしろ」と。

客観的な世間、世の中なるものは存在しない。」

と言ったのは現象学の創始者フッサールですが、これを簡単にいうと、ある企業のサラリーマンが見ている日本社会と、指定暴力団が見ている社会、刑務所の中にいる人間が見ている社会は違うということです。違いますよね。

だから、彼らのいう世の中や実社会って何なのか?(笑)

一回も民会の会社で働いた事も無い教員が会社の事を語れるか?という事です。

でも進路指導の授業などでは「そんな甘い事では就職できないし、通用しない。」と生徒に言う事を担当教員は期待される訳です。

それで私が進路指導の全体説明会でそう話していた時に「これは欺瞞ではないのか?話している自分は馬鹿者ではないか?」と強い疑問を持ったのです。

決定的だったのはそう演説すると

「先生、出来るじゃないですか?見直しました!」と進路指導部長に言われたことで、はっきり言えばこの教員は終わっているなと思ったのですね。

それで「俺はこのまま歳を重ねていくのか?」と強く不安に思ったのですね。

受験勉強をすればするほど創造力や感性は鈍っていく

私の長年の経験では、受験勉強をすればするほど創造力や感性は鈍っていくと感じています。

医学部受験に失敗して、小樽商科大学に入学した後、画家を目指そうと考え早速絵を描こうと思った時愕然としました。

絵画とは何か?芸術とは何か?何を描けば良いのか?まったく分からないのですね。

高校時代は梅原龍三郎のように自由に描けたのに、何か?大きな壁に直面したように感じました。

まったく描けないのです。

教育学原理の授業では、年齢別の脳構造を研究している人が講師でしたが、

「高校生と大学卒の人は脳のニューロン、神経回路がまったく違うのです。」

と教わりました。

何が違うのか?それは大学生になると、何をするにも知性=言葉を使用した論理的思考をするということでしょう。

高校を卒業すると「〇〇とは何か?」という抽象的な概念の定義や定理を探そうとする訳です。

ですから、無邪気に感性のままに描くことが出来なくなっていたのですね。

ここで、皆さんの創造力を確認するために質問します。以下の問に答えてください。

質問1 観た人が感心するような絵を描いて下さい。

どうですか?

年齢が高いほどまったく発想できなかったのではないですか?

これは絵を小説、詞、シナリオ、作曲、ビジネスモデル、政治的な課題の解決方法に置き換えても同じことですね。

もう一つ質問しましょう。

質問2 今の仕事や勉学とは別に一年以内に確実に収入を得られる仕事・副業を考えなさい。

難しいですよね。

これに答えられるのが創造力です。

これは東京芸大油画科をめざした高校生を描いた漫画『ブルーピリオド』にも出てくるお話だったと思うのですが、ある年の芸大油画科の入試問題にこのような出題がありました。

2日間、校舎内ならどこに行っても良いので自由な発想で絵を1枚書きなさい。そして作品の説明のレポートも同時に提出しなさい。』

それまで芸大では、そんな課題は出なかったので、これは芸大受験関係者の間で大きな話題となりました。

そしてこれ以降、芸大の教官もカリキュラムも大きく変わり、今では在学中や卒業制作展で画廊主にスカウトされ注目されて画家が数多く輩出されるようになったのです。

簡単に言うと、芸大油画科では作品のアイデアを出す力、発想法を4年間教えるようにしたのです。

日本画科はカリキュラムの改変をしなかったので、これらの画家はまったくと言って良いほど出ていません。

私が大学で直面したのは、絵の発想を思いつかないだけでなく、世の中はどういう風に出来ているのか?人生の目標は何か?人間は何のために生まれて来たのか?自分はどんな職業に向いているのか?今すぐ金を稼ぐにはどうしたら良いのか?ということについて

まったく、何にも分からない。何にもできない。」

という事でした。

居酒屋のバイトをするにも、お金の清算と接客に自信がなく尻込みするありさまで、我ながら情けなくなりました。

私は帯広畜産大学にも通ったことがあるですが、当時の西川義正学長に

「高校までに習った事は一切忘れなさい。教養の2年間は大いに遊び、とに角たくさんの本を読みなさい。」

と言われました。

これは小樽商大でも同じでオリエンテーリングで英語担当の永原教授にまったく同じことを言われたのです。

「高校までに習った事は一切忘れて、一からこの大学で学び直しなさい。」

つまり、日本の初等中等教育は有害だし役に立たないから捨てなさい。という事でしょう。

海外の高名な数学者たちが言ったように、日本の教育は習ったことを実際に社会や自分の課題解決に使わせることをしない。

これは「一度も試合をしないスポーツのようなもの。」だと彼らは言いました。

これは他の教科でも同じで、国語の授業で小説や詩、シナリオを書かせない。

社会科で現代の日本の政治の問題点をはっきりさせ、その解決策を提案しなさい

数学で、野球で、どのように選手の打順を決めたら得点力は向上するか、数学とコンピュータを使って解明しなさい

この打順の並べ替え問題は、小樽商大在学中にコンピュータ学科の和田完教授がやって道新に紹介されました。

友人達は「レベルの低い研究だ」と笑いましたが?私はそうは思わなかったですねえ。

これは画期的な研究で、プロ野球でも今こそ使用すべきでしょう。

和田教授の結論は「打率とホームランの本数が多い順番に打順を組め。ただしこれは高校野球までに言えることで、プロでは四番でホームランを量産するバッターがいるので、当てはまらないかもしれない。」
というものでした。

私の長年の高校や専門学校、プログラミングスクールでの教務経験では、受験勉強のような収束的思考ばかりを鍛える学習だと、発散的な思考、つまり想像力を発動する脳の部分が発達せず、いざ創造力を求められても短時間では発揮できるようにならないようです。

これは日本の東大卒を中心とするキャリア官僚や政治家のあきれるほどの創造力の無さが見事に証明していると思います。

彼らは入学後も国家公務員試験や司法試験の受験勉強を続けますから。

数年前に札幌市内のプログラミング専門学校で創造力育成のために、「起業のアイデアを出しなさい」といった一つの質問に出来るだけ多くの回答を出させるブレーンストーミングの授業をやりましたが、これがほとんどの生徒がまったくアイデアを出せず、大不評を買ったことがあります。

「全く出来ない生徒もいるのに、なぜ、その子に辛い思いをさせる授業をするのか?」
というのです。

その時も、いかに学校教育が創造力を委縮させるのかをまざまざと実感しました。

これが高偏差値の大学であれば、問題は無かったと思いますが。

小学5,6年生になると性の目覚めとともに、周りの眼、評価を非常に気にするようになります。

それで、劣等感の強い、かつ気の強い子供は不良になるわけですね。

ですので、成長とともにスクラッチなどでも無邪気にどんどんアイデアを出して、作品を作っていく事に抵抗を感じていきます。

ですから、そこを、継続して作り続けるように機会を与えていく事が決定的に重要になります

このことはスタンフォード大学工学部、大学院で起業論と創造力育成講座のトップであるティア・シーリング教授もまったく同じことを言っています。

そして世界の教育学者の研究成果でも小学校の3,4年位からの計画的な創造力育成授業が、大きく創造力を伸ばすことが証明されているのです。

開成高校では中学生にピアノと作曲を必修にしている

東大合格者数日本一の開成高校では中学生にピアノを必修にして中学3年生では作曲もさせています。

私の別なサイトでも書いていますが、ピアノを学ぶ事が左脳と右脳の連携を図る脳梁を太くして全脳思考を伸長する事が知られています。

札プロでは小学生高学年から『良いアイデアの出し方講座』をプログラミングと並行して学んでもらっています。

DTM=パソコンによる作曲も学んでもらっていますが、実は作曲は絵画制作よりはるかにやさしく、作詞・作曲は2日間も習えば多くの人はできるようになります。

多くのポピュラー音楽の作曲家が行っている通り、まずドラムやベースでリズムを作り、C7やG、A7などのコード=和音を組み合わせたコード進行を作り、メロディにする。

これに思いついた詩を被せる。

問題は、作った曲を聴いた人が「お~~~~!」と感心するか、つまらないと感じるかです。

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