高校の情報教育が変わり情報Ⅰ、情報Ⅱが新設されました
平成29年度に、高校の学習指導要領(実施する教育内容を規定した文書)が新しくなりそれまでは、プログラミングがない「社会と情報」と、プログラミングを扱う「情報の科学」の2科目があり、いずれか1科目を選択する形式となっていました。
そしておおよそ8割の生徒が、プログラミングのない『社会と情報』を選択しているのが実情です。
新学習指導要領では、「情報I」と「情報II」に再編されました。
情報Iは必修でプログラミングも学ぶ内容となっており、IT全般や情報モラルといった座学に加え、プログラミング言語の学習、データ分析等の学習を行います。
情報IIは選択で、情報技術を使った問題解決や、情報システムの設計ができるレベルを想定しています。
情報Ⅰ・Ⅱが新設された背景と理由
こちらのサイトに文部科学省の情報教育・外国語教育課情報教育振興室 教科調査官である鹿野利春さんの、新指導要領についての解説があります。
「我が国が目指すべき未来社会の姿として、第5期科学技術基本計画において「Society 5.0」が提唱された。
経団連の提言「Society 5.0-ともに創造する社会-」では
「Society 5.0 時代に人間に必要になるのは、社会に散らばる多様なニーズや課題を読み取りそれを解決するシナリオを設計する豊かな想像力と、デジタル技術やデータを活用してそれを現実のものとする創造力である。
デジタル革新と多様な人々の想像力・創造力を融合することで、『課題解決』を図るとともに、われわれの未来をより明るいものへと導く『価値創造』をもたらす。」としている。」
要するにスティーブ・ジョブスやマーク・ザッガーバーグ、三木谷浩史のようなIT分野での大起業家を輩出する教育を提言して実行しよう。
そこまで行かなくとも、何らかの形で彼らのように社会に新たな価値をもたらす職業人になってほしいという事ですね。
新指導要領の狙い、内容の解説
新指導要領では育成を目指す資質・能力の要素を「資質・能力の三つの柱」として以下のことを掲げています。
- 実社会で働くための知識及び技能
- 未知の状況に対応できる思考力・判断力・表現力等
- 学んだこと人生や社会に生かそうする学びに向かう力・人間性等
これを見ると人間性という言葉は入っていますが、相変わらず『善悪の判断』や『道徳性』、『創造性を発揮する事でのストレス耐性』などは入っていないですね。
これでは、今の政治家や役人、マスコミ関係者や財界人の一部の『平気で嘘をいい、恥という概念がなく、法を犯すのも権力で揉み消せば良い』という人間性は相変わらず続くと思います。
この三つの柱をみると、簡単に言うと起業力のある、高い実学スキルを持った人間を育てようとしているのが理解できます。
参考ページ・・・『平成29年改定学習指導要領』
情報Ⅰの狙いは何でしょうか?
情報Ⅰの狙い、趣旨は以下の通りです。
まず、社会の課題・問題を発見する力、つまり心理学でいう『課題への敏感さ!』を育成することを狙っています。
「情報Ⅰを新設することにより、プログラミング、 ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベース(データ活用)の基礎等の内容を必修化し、データサイエンス等に関する内容やコンピュータ等を活用した各科目の学習活動も充実させることとする。
といっています。」
さらに、より具体的な教育目標として以下の3つを掲げています。
1つ目は「情報活用の実践力」です
課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含め、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力をつけることとしています。
2つ目は「情報の科学的な理解」です
情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と、情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善したりする基礎的な理論や方法を理解することとなっています。
情報の真偽を判断する能力と、ビッグデータなのどの分析・利用能力を養います。
3つ目は「情報社会に参画する態度」です
Twitterでの個人攻撃で自殺する人も出て来ました。コンテンツの盗用や不確かな情報・デマの拡散も日常茶飯事です。
さらに、一度ネットに流した情報は2度と消せない恐ろしさも充分に理解させないといけない。ということでしょう。
情報利用においてのセキュリティと道徳性、規範を身に付けてもらうということですね。
その上で情報社会にクリエイティブに参加しようという態度を育成したいとのことです。
これを元に、情報Ⅰのカリキュラムは4項目に分かれています。
- 情報社会の問題解決
- コミュニケーションと情報デザイン
- コンピュータとプログラミング
- 情報ネットワークとデータの活用
情報Ⅱの内容
情報Ⅱのカリキュラムは以下の通りです。 情報Ⅱの学習内容は情報Ⅰの内容をより深めたものとなっています。
- 情報社会の進展と情報技術
- コミュニケーションとコンテンツ
- 情報とデータサイエンス
- 情報システムとプログラミング
- 情報と情報技術を活用した問題の発見
1では、情報技術の歴史やコミュニケーションの変化等を学びます。
「情報Ⅱ」では,将来の情報技術を展望します。人工知能の機能や性能などが向上すると人の役割は変化し,人間に求められる知的活動も変化していきます。
例えば,人の働き方などが変わってくることを理解します。
学習項目はSNSや情報デザイン、ユーザビリティ、音声対話、AIと人の役割、将来の情報システム、自動運転、マーケティング、セキュリティ、コンテンツの創造と活用
2では、コミュニケーションの形態やコンテンツの制作を学びます。
目的や状況に応じて情報デザインに配慮し,複数のメディアを組み合わせてコンテンツを制作し,発信及び発信した時の効果や影響も考えます。
学習項目はメディア プランやメディア、メディアの組み合わせたコンテンツ制作、ユーザーインタフェースの考慮、アクセシビリティ、プロトコル分析(認知科学)、ユーザの反応の分析やマーケティング方法などを学びます
3では、ビックデータの役割やデータのモデリング・分析・評価を学びます。
この章が最もボリュームがあります。
情報Ⅱでは,多様かつ大量のデータをデータサイエンスの手法により分析し解釈します。統計については、数学Bと連携しています。
学習項目はデータベース スクリーニング、重回帰分析、残差分析、主成分分析、k-近傍法、分類木、クラスタリング、機会学習、深層学習(ディープラーニング)、データマイニングなどです。
◆数学Bの内容は以下の通りです。
- 数列:数列とその和;漸化式と数学的帰納法
- 統計的な推測:標本調査、確率分布;統計的な推測;区間推定・仮説検定へ変更
- 数学と社会生活
4では、楽天やAmazonのような情報システムの流れやシステムの制作・統合・テストを学びます。
学習項目は情報セキュリティやサービス停止時の影響、要件定義、プロジェクト マネジメント、プログラミング言語の選択、動作テストなどです。
5では、情報技術により社会が受ける影響やデータ活用の為のIT活用等を学びます。
この章は情報1と2のまとめとして位置づけられていて、これまで身に付けた資質・能力を伸ばすとともに,他教科等とも積極的に関連を図ることが考えられています。
学習項目はAIの発達や人間に求められる能力の変化、VR(バーチャル・リアリティー=仮想現実)・AR(Augmented Reality 拡張現実)・MR(Mixed Reality 複合現実)、データ解析、物理現象や数学的事象のシミュレーション、機械学習、外部プログラムの活用などです。
科目情報のカリキュラムについての感想と高校授業での留意点について
こう全体を読んでみると、『課題への敏感さ』と、新しいITサービスを想像できる人間を育成しよう、ビッグデータ時代、AI時代を迎え、これらの産業に強い人間を育成しようという意図はわかります。
しかし、どちらも内容が盛りだくさんすぎると感じます。
さらにこのカリキュラムも非常に抽象的で、理解しづらいですねえ。
これだと、ただでさえ情報教員が不足していて、他教科の教員が担当している高校も多いので、教員のIT技術への経験不足、勉強不足からただ教科書の文章を字面で表面的に解説するような説明になりがちでしょう。
いわゆる『地理学者、観てきたようなことをいい』になってしまいがちです。
『教師がシステム開発の詳細を経験してきた。あるいは見学したことがある。』
『プログラマやシステムエンジニアに詳細な説明を受けたことがある。』あるいは
『専門学校などで『システム開発模擬演習』の授業を担当したことがある。』
などの経験がなければ、実物や現場を想定しながら、実習も交えて授業展開することはできないでしょう。
料理でいえば、フルコースの作り方を教えるのに、作ったことがないのに教えろというのに等しいです。
これでは、数学や理科などと同じ『勉強』になってしまうということですよね。
実際に使う実践をしないで、ただ紙上で文章をなぞって理解したような気になるだけという。
これらの内容は、やはり最低限、基本情報技術者試験は持っていないと指導はできないでしょう。
さらに、プログラム開発言語はPython一択でしょうがこの時間数では、本当の初歩しか指導できないでしょう。
私も北海道の公立高校でBASICとCOBOL言語のプログラミング授業を行いましたが、基礎編の授業は1週間に2コマでしたので。
さらに情報教員でどれぐらいがPythonなどのプログラム開発言語を習得しているのか?も疑問です。
かつてCOBOL言語からC言語に変わったとき、少なくとも私の最初の職業である商業教員では、ほとんど誰もマスターできませんでした。
なぜかというと、商業科や情報の教員で国立大学や難関私立大学の出身者はほぼいないからです。
私のような国立大学卒は、現場教育レベルの低さや勤務地などの待遇の悪さに耐え切れず若くして転職してしまいます。
札幌啓北商業や東商業でも、かつてのように授業でプログラミングは教えていないし、プログラミングは生徒同士がパソコン部で生徒同士が教え合っている状況だと在校生から聞いています。
ですから、C言語並の難易度のプログラム開発言語は旧帝大クラス卒の人間でないと付いていけてないというのが高校現場の現実ではないでしょうか。
十分なプログラミング教育を望むなら、チームラボなどの企業が青田買いをしている高専に進学するのが確実だと思います。
朝日新聞の報道でも、現場は悲鳴を挙げているといいますが、それは本当でしょう。
どうしたら高校の現場は困難な状況に対処できるのでしょうか?
では、どうしたらこれらの直面する困難な課題に対処できるのでしょうか?
それはすでに始まっているのですが、札幌WEBプログラミングスクールのような民間企業の力を借りて、民間スクールの講師が授業を請け負ったり、オンライン授業を配信したり、教師が研修を受けたり、教師にオンライン学習システムを提供などのサービスを利用することでしょう。
これは一部の中学高校で学習塾が受験指導を肩代わりしていのと同じですね。
共通テストの受験対策はどうすれば良いのでしょうか?
2025年から「大学入学共通テスト」に情報Iが加えられます。試験時間は60分です。
また、既卒者等への配慮として、現行の選択必履修科目である「社会と情報」と「情報の科学」に対応する試験も用意され選択できるようになっています。
プログラミングの必修化に、不安を覚えている方も少なくないでしょう。
受験対策としては、すでに、教科書や問題集も出ていますし、過去の例からみると初回のテストは難易度を落として実施し、その後、回を追うごとに難しくするのが文部省のやり方なので、これらの教材をきちんと学習して高得点を狙う事が重要です。
また札幌WEBプログラミングスクールなどのプログラミングスクールで、希望の学習内容について相談して受験対策となる授業を受けるのも非常に効果的でしょう。
札幌WEBプログラミングスクール小中高校生コースではご本人のご希望に合わせてオーダーメイドカリキュラムを作成。
もちろん情報Ⅰ・情報Ⅱの全内容をバッチリ学べます。
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